『超明快 レベルラインテンカラ』と『科学する毛バリ釣り』
より早く、末長く、テンカラを楽しむために

憧れだった渓流釣り、そしてテンカラ。ルアー釣りで渓流デビューし、さあ次はテンカラだと意気込んだものの、周囲に経験者がいなくてテンカラという釣りがどういうものか、さっぱりわからない。そんな状況から救い出してくれたのが、テンカラ大王こと石垣尚男さんの著書、『超明快 レベルラインテンカラ』だった。

今となってはこの本を読もうと思った理由を思い出せないけれど、おそらくYouTubeで見たいくつかのテンカラ動画の中で、石垣さんの教え方やテンカラに対する考えに納得できたからだと思う。

YouTube検索結果
YouTube「石垣尚男」検索結果

動画だけでもたくさんのことを知ることはできるけれど、僕の場合「理解するのに役立った情報」というのは本から得ることが多い。テンカラの場合も同じで、たくさんの動画よりもこの一冊から得た知識の方が役に立っている。
動画では得難い、この本に書かれている情報はなにか? 石垣さんは前書きでこう書かれている。

状況判断をもとにし、動作を伴い、時間的に変移するテンカラを活字で表現するには限界がある。それには映像が最も適しているが、逆に映像では伝えきれないものも多い。それはテンカラの全体像である。

超明快 レベルラインテンカラ

今更わざわざ言うことでもないけれど、ネットはいろんな人の考え方ややり方を知ることができて、とても便利だ。
でも、ある物事の全体像を知りたい時は、一人のまとまった考え方を知る方が手っ取り早い気がする。もちろん最初の情報源には信頼できる人を選ばなければならない。

石垣さんは長い間テンカラを広める活動をされていることもあり、メディアへの露出も多く、各地のテンカラ名人との親交もあって、石垣さんのことを信頼に足る方だと判断できる情報もたくさんある。

本を読んだら兎にも角にも渓流に足を運んで、実際にテンカラ竿を振ってみればいい。最初は思った通りに毛鉤は飛んでいかないだろうけれど、本に書かれていたキャスト時の注意点を思い出して練習すれば、必ず毛鉤を飛ばすことができる。
もちろん思った通りのポイントに毛針を飛ばせるようになるには、さらなる練習が必要だ。

ひとまず毛鉤を飛ばせるようになれば、機嫌良く、テンポよくキャストを続ければ良い。きっとそれだけで楽しいはずだ。運が良ければ魚が釣れるだろう。僕もまだまだ初心者なので、キャストした毛鉤を見失ってピックアップしたら魚が掛かっていて驚くことがある。初心者なので、それでも楽しい。
でも、「なぜ魚が釣れたのか?」「なぜアタリを感じなかったのか?」など、新たな疑問は出てくる。そんな時にこの本を読み返すと、前回読んだ時には読み流していたことがひっかかったり、理解できたりする。理解していたと思っていたことは、さらに理解が深まる。
どんな本でも読み返すことで理解が深まるとは思うけれど、この本はその度合いが強いと感じる。

何度目かの読了後、ふとカバーの内側(「そで」というらしい)に書かれている文章をなんとはなしに眺めると、「これからテンカラを始めようという人にはベイシックを、ステップアップしたい人にはより釣れるテクニックを。そして、迷った時には本書に戻る『テンカラ教科書』の決定版!」と書かれていた。
読んでいない人はよくある煽り文句だと思うだろうけど、この本はほんとにそういう本に仕上がっていると思う。

『超明快』を楽しめた人には、『科学する毛バリ釣り』も強くおすすめする。内容は重複していることも多いけれど、より詳細な情報や、その考えに至った根拠や実験結果、名だたるテンカラ名人達が使用している毛鉤やラインの比較もあって、読み物としてより充実している。

『超明快 レベルラインテンカラ』『科学する毛バリ釣り』

テンカラは難しいというイメージがあるみたいだけど、やってみるとルアー釣りに比べて特に難しいということはない。ある程度キャストできるようになれば、最初は竿を振っているだけでも、「俺、今……テンカラをやってるぞ!」という感じでとても楽しい。
ルアー釣りと比べるとキャスト回数は桁違いに多いので、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」といった感じもする。

「テンカラやってみたいけど、どないすんねん?」と疑問に思っている人は、とにかく石垣さんの本を読んで、いろんなテンカラ動画を見てから、渓流で竿を振って欲しい。
思ったように毛鉤は飛ばないかもしれない。というか、きっと飛ばない。でも、諦めずもう一度本を読んで欲しい。
きっと書かれていることが初回よりもすんなり理解できると思う。そして、またテンカラ竿を振りたくなるはず。
そうなった人は、次の釣行では(少しは)思ったように毛鉤が飛ばせるはずだ。運が良ければ魚が釣れるだろうし、運悪く釣れなかったとして、「テンカラってどないすんねん?」とは、もう思っていないはずだ。

テンカラで釣ったアマゴ
ルアーを投げられない小さな小さな落ち込みから釣り出した17〜18cmのアマゴ。人工のブロックでできた落ち込みだったので、「念のため……」という感じで毛鉤を落としたので、グイッと引っ張られて驚いた。こういうことを経験すると、テンカラがより好きになる。

超明快 レベルラインテンカラ

基礎的なことがしっかりと解説されているので、本当に何度も繰り返し読んだし、その度に「良い本だなぁ」と石垣さんに感謝の念を覚える。この本を読んで参考動画を見れば、テンカラを楽しむことはできる。

購入時の価格 ¥1,620

科学する毛バリ釣り

『超明快』に書かれていることがより詳しく書かれているので、理解も深まる。『超明快』を気に入った人なら、より楽しく読めると思う。とはいえ古本でしか入手できないので、無理して高額で買う必要はない。『超明快』だけでテンカラを楽しむ準備は十分できる。

購入時の価格 ¥896

参考リンク

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

  • Instagram
  • YouTube
  • ANGLERS