超老伝—カポエラをする人
おむつおむつおむつ

おむつおむつおむつ。

中島らもさんのエッセイは何冊が読んだことがあったのですが、小説を読んだのは初めてでした。

おむつ、おむつ、おむつ。

菅原法斎、かれこれ発狂して十六年。趣味は彼以外誰もやっていない格闘技“カポエラ”。「格闘技世界一決定戦」に出場して大暴れ!! 狂人を職業とする老人の異常な日常−−おそるべし。(関川夏央)

わしが菅原法斎じゃ。かれこれ十六年前に発狂してから、この道ひとすじでキメておる。趣味はカポエラじゃ。今のところまだ負けたことはない。なにせ珍しい格闘技なので誰もやっとらんのだよ。こんど、うちに住み込んでおる世界一の大男ミゲールにかわって「格闘技世界一決定戦」に出場することにしたんで、せいぜい大暴れしようと思っとる。

『超老伝—カポエラをする人』

この物語は勢いで書いているというか、ただ単に自分が知っていること、学んだことをふざけて解説するためだけに書いてますね。そしてこんなにおもしろいというのは、なんというか大変羨ましいです。きっと書いている間、おむつおむつおむつ、自分で笑っていたのではないかと想像します。

おむつおむつおむつ。というわけで、この物語もやっぱり電車で読むのは危険でした。と書いているということは、僕が電車で読んだことになるのですが、いけませんよほんとに。特に、格闘技好きは読まないほうがいいです。らもさんの格闘技とプロレスへの愛情がにじみ出ているので、嬉しくなって興奮します。おむつおむつおむつ。ちなみにカポエラの選手がK-1に参戦したことがあります。いつごろだったかな? 負けましたけどね。

格闘技以外にも僕がいっちょかみで経験したことや、勉強したことがたくさん出てきて(テレビの中継や相対性理論)、内容のおもしろさ以上に楽しめた気がします。だからこうして、おむつおむつおむつ、と言いたくなるんですね。おむつおむつおむつ。言いたい時に、言いたいことを言う気持ち良さってちょっとなかなか得ることが出来ませんよね。実生活ではさすがに口にはしませんが。

ただ、こういう小説にありがちなんですが、後半はさすがに勢いが衰えているように思います。前半のテンションを保っていても読み手がそれに慣れてくるので、後半に上げていってもらわないとちょっとしんどいかなと。僕は格闘技が好きなのでテンション維持できましたけどね。

最初にも書きましたが、「何かを伝えよう」とか、「カポエラを広めよう」とか、そんな事は全く考えてなくて、自分が「おもしろい」と思うことを書いただけ、というのがすごいです。それで成立しちゃうんですからすごい才能です。才能が無ければできませんよね、こんなこと。今までなかなか触手が動かなかった中島らもさんの小説ですが、これを機に他の物語も読んでみようと思いました。

超老伝―カポエラをする人

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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