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良い物語なのに好きになれない登場人物たち

この作品が「児童文学」といわれているからなのかわかりませんが(そもそも児童文学ってなんですか?)、とても読みやすかったです。さらーっと読めます。野球には全く興味がないのですが、それでも「ピッチャーとは」「キャッチャーとは」「野球とは」といった考察や、野球をすることと楽しむこととの違いとか、「へぇー、なるほど」と思う表現が多々ありました。でも「読み込んでいる」という感覚はなかったです。

どうも主人公「巧」がしっくりこなかったんですね。というか率直に言って僕の苦手な人間です。

「自分に絶対の自信を持っていて、そしてその自信は本物。他人の良い面を積極的に見ようとしないし、見たくない」

こういう人間ってどこにでもいるし、僕の一部(であって欲しい)にもそんな部分はあると思います。でも口に出されたらムカムカします。巧は自分に力がある分余裕もあるので、そこんんところがまたムカつくのかもしれません。持たざる者の妬みとでも言いましょうか……。
あまり好きにはなれませんでしたが、「なるほどね。悪くない」と思える作品です。ただ、僕は巧を好きになれなかったと。よく考えたら他の登場人物もあまり好きではないです。設定や物語は好きなのですが、どうも出てくる人間が好きになれない。僕にとってそういう作品はとても珍しいです。

巧と同じ歳の男の子がこの本を読んだら、よけいにしんどくなりそうな気がしますね。巧は母親や父親が自分を理解していないことにいらだちを覚え、自分のことをわかった風なに語られると怒るというより、「また誤解している」と落胆します。そういう物語を大人が書いて、大人(自分の母親とか)が読んで、子どもを理解した気になっているのか、と思って。とても意地悪な考えですが、僕が小中学生の頃に読んでいたら、きっとそう思ったと思います。

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What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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