私は貴兄のオモチャなの
明るいアンハッピーエンド

先週は「岡崎京子短編読書週間」と銘打って、短編を読みふけりました。岡崎京子さんの魅力は底なしですね。どれも本当におもしろいのですが、この短編集は特にお気に入りの一冊となりました。どの物語もハッピーエンドではないのに、不思議と全然暗くありません。

表題作の「私は貴兄のオモチャなの」はとんでもないお話なのですが、もう最高に素晴らしい。かわいい一途な(?)女の子がとんでもない目に合うのですが、なぜかとても幸福感にあふれている物語です。ラスト近くの見開き1ページの開放感、そして最後の一コマの物憂げな表情がとても好きです。物語の前半では人を好きになることの切なさ、やるせなさは軽く描かれていますが、この2コマでちゃんとずしんと伝わってきます。

『私は貴兄のオモチャなの』表紙

最後の物語「3つ数えろ」の新婚夫婦の会話も素晴らしいです。

洋子:
ねえ ダーリン
世の中にはセックスに過剰に何かを求める悲しい人たちが多すぎるわ
何かを見失っているのよ

愛だけが幸福をはこんでくるのにね

弘:
そうさ ハニー
それを教えてくれたのが君さ

3つ数えろ -『私は貴兄あなたのオモチャなの』

はい。異論ありません。確かにその通りだと思います。愛。愛だけが幸福をはこんでくるんです。愛こそ全て。愛があれば他には何も要りません。なんちて……と茶化してしまいますが、対象が人であれ物であれ出来事であれ、愛すべきものはちゃんと愛さないといけません。……なんちて。

私は貴兄のオモチャなの

空知くんがなぜこんないい子を好きにならないのか、さっぱりわかりません。

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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