猫にかまけて
猫が教えてくれること

僕はこのサイトでずっと「電車やドトールで読んではいけない本」の筆頭に、町田康の作品を上げていました。なぜなら顔がにやつくから。それなのにドトールで読む本を探しに本屋さんに入り、この本を買ってしまいました。僕は町田康が好きで猫も好きなので、この本から逃げる術がありませんでした。タイトルどおり、町田康が一緒に住んでる猫達にかまけている生活をつづったエッセイです。町田康が好きで猫も好きな人は必読です。町田康に興味がなくても、猫好き、あるいは猫に興味がある、という人も必読です。

購入後さっそく近くのドトールでスイートポテトとブレンドコーヒーを注文し、近くにあまり人がいない場所に着席。1ページ目からニヤニヤしながら読んでいたのですが、慣れというのは恐ろしいものです。ニヤついてもあまり恥ずかしくなくなっていて、普通に笑顔で読書を楽しみました。そのうち声をだして笑ってしまいそうで怖いです。

『猫にかまけて』単行本

一人でニヤつくことには慣れてきましたが、人前でやっちゃいけない、あるいはできない、ことは他にもあります。その筆頭は「涙を流す」ことだと思います。やはり男の子たるもの、簡単に泣いてはいけません。しかしなんだか最近涙もろく、困っています。それを踏まえても、町田康のエッセイで目に涙をいっぱい溜めることになるとは夢にも思いませんでした。

最初の方は全く問題なくおもしろいです。「ココア」と「ゲンゾー」という猫たちが得意技を披露して町田康を翻弄したり。そこに野良猫の「ヘッケ」が加わるのですが、ここら辺りからつらく悲しいお話になってきます。それが落ち着き、再びおもしろエピソードが続くのですが、そのうち「ココア」の悲しいお話が始まります。全てが終わった後になって、「もっとかまってやるべきだった」と後悔している町田康の文章を読んでいると、こっちまで辛くなってきます。そんなわけで、今まで読んだ町田康の作品で最も電車やドトールで読んではいけない作品となりました。

どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らは洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた。

『猫にかまけて』

猫にかまけて

What’s so bad about feeling good?

Update:

Text by pushman

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