マウス|アート・スピーゲルマン

マウス|アート・スピーゲルマン

Author : pushman|Book|2005-01-05 Wed 10:50

以前読んだ「ナイン・インタビューズ」で、相当猛烈気になった「マウス」を読みました。物語の流れは知っていましたが、それから受けたいろんな感情は想像以上でした。

副題が「アウシュビッツを生きのびた父親の物語」とあるように、作者の父親が体験した第二次世界大戦を描いた物語です。息子である作者が父親にインタビューして、アウシュビッツで起きたこと、父親の生きてきた道のりを聞き出すのですが、そのインタビュー自体も物語として取り入れ、第二次世界大戦と現代を平行に描き、父と息子の関係も浮き彫りにしていきます。

また、人を全て動物に置き換えて、人種間の物語であることを明確にしながら、やはりその読み手をニヤリとさせる仕掛けがあり、書籍自体から受ける印象よりもずっと深く読みいってしまいました。

一旦「マウス」がでてしばらくしてから「マウス 2」が出たみたいですが、そこらへんの経緯は解説に書いています。僕は基本的に文庫本などの解説があまり好きではないのですが、この本の解説はよかったです。また、この本を知るきっかけになった「ナイン・インタビューズ」も読み直したのですが、当たり前かもしれませんがすごい相乗効果があって、あらためて柴田元幸さんに感謝したくなりました。ありがとうございます。

柴田さんが言っているように、ほとんどスピーゲルマンが喋っているのですが、とても興味深い話ばかりです。とくに、ロベルト・ベニーニの「ライフ・イズ・ビューティフル」へ言及は「あーなるほどー!」と他の誰かに話したくなる内容でした。僕も大好きな、というかとても感動した映画なのですが、なんというんでしょう…変な言い方になりますが反省しました。あまりにも単純に物語として片づけてしまっていたんだなと。おそらく今見ても、やっぱり感動してしまうと思うのですが、最初に見たときの感動とは別の感覚が生じると思います。

というのも、ちょっとこれは「ナイン・インタビューズ」を読んでいないと分かりにくいかもしれませんが、実際にあった出来事を物語として置き換えることと、物語を創るときに実際にあった出来事を(言い方悪いですが)利用するということは、全然違うことを全然僕は分かっていなかったからです。「ライフ・イズ・ビューティフル」は確かに感動します。ベニーニもおもしろいし、物語の構成もうまいし、しかけも嫌みにならず、見る側に「そうなってほしい」という願望を抱かせながら話を進めていくのもすごいと思います。でも、その話の土台になぜアウシュビッツを持ってきたのか? よく考えると、別にアウシュビッツである必要はないんですよね、あの物語。別の時代の別の場所でも物語は成立すると思います。

深く考えないと感動できないような物語は好きではないのですが、そう意識していたことによって、あまりにも安易に感動しすぎていたかな、と思いました。…別に「ライフ・イズ・ビューティフル」をダメだ、とか思っているわけではないんですけどね。

とにかく、この物語を読むときは結構気合いをいれないと、気持ちがざわついてうまく動けなくなります。読んでいて思い出したのが、NHK スペシャルの傑作「映像の世紀」の第二次世界大戦前後の回です。これを見ていたときも、なぜ自分がこの時代に生まれたのか? なんてことを考えてしまいました。あまりにもギャップがあるのに、それはたった 5〜60 年前の話なのです。

柴田さんの学生さん達が、「マウス」を読んで感じる「自分はこの物語に感動する資格があるのか?」という疑念は、やっぱり僕も浮かびました。そんな余裕を持てるぐらい、恵まれた環境に生きているからといって、妙な義務感は持ちませんが、それでも最近の様々な事件に直接関わっていないことは、ほんとに感謝すべきことですし、その運を大事にする努力は怠ってはいけないな、と思います。

そんな幸運な僕達にも、しっかりと考えて答えてくれているスピーゲルマンの回答は、さらに「僕は幸運なんだ」ということを自覚させてくれるものでした。

この物語に興味を持った方は、ぜひ「マウス」とともに「ナイン・インタビューズ」も読んで欲しいです。どっちか片方だけの人も、両方読む相乗効果でより深く味わえますよ。とにかく必読の物語です。

マウスーアウシュヴイッツを生きのびた父親の物語

マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

小野 耕世、Art Spiegelman、アート・スピーゲルマン
晶文社:1991/08
価格:¥ 2,100(定価:¥ 2,100)
ユーズド価格:¥ 779
通常24時間以内に発送
(価格・在庫は11月21日 15:16現在)


マウスーアウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 (2)

マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 (2)

アート・スピーゲルマン、小野 耕世、Art Spiegelman
晶文社:1994/08
価格:¥ 2,100(定価:¥ 2,100)
ユーズド価格:¥ 1,400
通常24時間以内に発送
(価格・在庫は11月21日 15:16現在)


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