Heartfield

What’s wrong about feeling good?

じみへん 仕舞—— 深く考えると解決できなくても、笑える。

2015年09月16日(水)

読書 /

Text by pushman

中学生の頃に初めて読んだ、中崎タツヤの「兎に角」。画は下手くそというか雑というか汚いというか……とにかく今まで見たどの漫画とも違うタッチで「こんな画でもいいんだ……」というのが率直な感想でした。しかしそれでも数話読んでそのおもしろさにずぶりと浸かり、声を出して笑いながら20年以上読み続けてきました。ここ数年は連載作品も減少し、発行ペースも遅くなり、単行本が出るたびに書き込みが少なくなっていく画に不安を感じていたのですが、今作の帯とあとがきに記載されているとおり、還暦を迎えて断筆されるようです。残念。

じみへん 仕舞

数年分がまとまっているだけあって、大変分厚い最終巻。値段もお高い。でも、過去に本人が発言していたように、中崎タツヤの作品はまとめて読むのが正解です。もちろん前後の作品によってその話のクオリティが上がったり下がったりするわけではないのですが、おもしろさが頭に伝わるまでの時間が少しだけ短縮されるような感覚です。「よく考えたらおもしろい」という話が、流れに含まれると「おもしろい」という話になるわけです。

昔の作品もパラパラと読み返しましたが、やっぱり変わっていることも多いですね。画の質はもちろんですが、話の雰囲気もかなり変化しています。「くだらないことを真剣に考えぬくおもしろさ」という点は共通していますが、場面設定と人間のリアルでおかしな行動からくるおもしろさを描いていることが多い昔の作品に比べると、最近の作品は人間の思考、行動により重点がおかれ、哲学的な思考実験をしているのかのようです。もちろんそんな大げさな話ではないのですが。

『じみへん2巻』と『じみへん 仕舞』の比較
中崎タツヤ作品でおなじみのキャラもじみに変化。線も細くなっています。鼻は同じ。(左『じみへん2巻』 右『じみへん 仕舞』)

昔から作品に対して感心されたり、小難しい解釈をされることを嫌っているようでしたが、一般人からすると笑いつつも「なるほど……」と思ってしまう話が多いのも事実です。その意識のずれもまたおもしろい。生きる意味に悩んだり、自分に自信が持てずしんどい思いを抱えていたり、腹が立って我慢ができなかったり、日常にあふれるちょっとした苛立ち、不平不満。そんなこんなのしょうもないものごとのほとんどは、笑いに昇華できるんだと、このじみでへんな漫画は教えてくれます。